世界ではAIを使った開発がどこまで進んでいる?
AIコーディングツールの利用者の63%は、もうエンジニアではありません。世界で何が起きているのかを、調査データをもとに紹介します。
AIで開発をしている人の63%は、もうエンジニアではありません。その一方で、そうして作られたアプリの65%に弱点が見つかっています。良い変化と深刻な課題が、同時に進行している。それが今の状況です。感覚ではなく、調査データで確かめます。
まず結論
結論として、AIで開発する人の半分以上は、すでにエンジニアではありません。
63%
AIコーディングツールの利用者のうち、開発者ではない人の割合です。企画職、マーケティング担当、創業者、デザイナーなどが含まれます。
一方で、作られたものの多くに問題が見つかっているというデータもあります。良い変化と課題が、同時に進んでいるのが今の状況です。
数字で見る現状
作る人が変わった
先ほどの63%という数字が示すのは、「作る人=エンジニア」という前提が崩れたということです。
別の調査では、AIコーディングツール利用者のうち84%に開発の経歴がないという数字も出ています(Value Add VC)。調査の対象によって数字は変わりますが、傾向は一致しています。
同時に、問題も広がっている
65%
AIに任せて作られたアプリのうち、調査で弱点が見つかったものの割合です。58%には、放置すると危ない重大な問題が含まれていました。
さらに、確認する側の状況も厳しくなっています。
48%
AIが書いたコードを「必ず確認している」開発者の割合です。AIコードの正確さを信頼している人は29%で、前年の40%から下がりました。
興味深いのは、信頼度が下がっているという点です。使う人が増えて実態がわかってきた結果、「思ったより注意が要る」という認識が広がったと読めます。
実際に生まれているもの
数字だけだと実感が湧かないので、具体例を挙げます。
海外では、開発者ではない1人が作ったサービスが、9か月で年間8000万円規模の売上に成長した例が報告されています(Value Add VC)。
こうした例が示すのは、「作れないから諦める」という制約がなくなったということです。
ただし注意してください。これは成功した例です。 同じように作られて、問題を抱えたまま公開されているものも大量にあります。報道されるのは成功例だけなので、感覚がずれやすい部分です。
同時に起きている問題
具体的にどんな問題が起きているのか、報告されているものを挙げます。
- データを保存している場所が、インターネットから丸見えになっていた
- ログインの仕組みが弱く、簡単に突破できた
- 公開すべきでない書類が、誰でも見られる状態で置かれていた
- 個人利用のつもりが、いつのまにか業務で使われていた
最後の項目が特に重要です。 「自分だけで使うつもり」で作ったものが、便利だからと会社で使われ始める。この移行のときに、確認が抜け落ちます。
自分とAIでできることが多い
- 自分や友達だけで使うツール
- 学校や会社の中だけで使うツール
- アイデアを試すための試作品
- 利用者が少ない小さなサービス
専門家の知識が重要になる
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりをする
- 利用者が一気に増えたとき
- 動かなくなったときの復旧
左側で作ったものが、いつのまにか右側に移っていた。 これが、今いちばん多い事故の形です。
組織側の課題
企業でも問題になっています。
IT部門の責任者の61%が、「管理されていないAI利用」を最大の障害として挙げています(Keyhole Software)。
誰がどこで何を作っているのかを、会社が把握できていない状態です。便利なので現場が勝手に使い、気づいたら業務の一部になっている、という構図です。
この状況をどう読むか
私たちの見方を書きます。
作れるようになったこと自体は、はっきり良いことです。 これまでアイデアがあっても形にできなかった人が、自分で試せるようになりました。この変化は後戻りしません。
一方で、「作れる」と「公開していい」の区別が広まっていないのが、今の課題です。この2つを別のものとして理解している人は、まだ少数です。
数字が示しているのは、道具の問題ではなく、判断の問題です。65%に弱点が見つかるのは、AIの性能が低いからではありません。AIは頼まれていないことを考えないという性質を、使う側が理解していないからです。
だから必要なのは、より賢いAIではなく、「何を確認すべきか」を知っている人です。
日本の状況は?
日本でも同じ変化が起きています。詳しくは日本でも「AIで自分で作る」は広がっている?にまとめました。
この状況で、自分は何をすればいいのか
データを見て終わりでは意味がないので、行動に落とします。
作る側に回るなら
世界で起きていることは、日本でも同じように起きます。始めるコストはほぼゼロです。
自分用の小さな道具を作りたいです。プログラミングは初めてです。
作りたいもの:
・(毎週やっている面倒な作業を1つ)
まずは自分のパソコンの中で動く状態にしてください。
65%の側に入らないために
作れるようになった人の多くが、確認をせずに公開しています。 そうならないために、公開前に次を出してください。
公開する前に、安全面の確認をしてください。
次の項目について、今どうなっているかを説明してから、問題があれば直してください。
1. ログインした人が、他人のデータを見られてしまわないか
URLの番号を書き換えた場合も含めて確認してください
2. 管理者用の画面に、URLを直接入力すれば誰でも入れてしまわないか
3. 鍵にあたる情報が、ブラウザから見える場所に置かれていないか
4. フォームに想定外の値を送られたとき、サーバー側で止められるか
直す前に、まず現状を教えてください。
この指示を出すだけで、報告されている問題の大半は防げます。
組織で使うなら
「管理されていないAI利用」が問題になっていると書きました。対策は、試作専用の環境を分けることです。 具体的な進め方はPdMがコードを書ける時代、エンジニアとの棲み分けをどう決めるかにまとめています。
よくある質問
Q. 数字は信用できますか? A. 調査ごとに対象が違うので、数字にはばらつきがあります。ただし**「非エンジニアの利用が過半数」「作られたものの多くに問題がある」という傾向は、複数の調査で一致**しています。
Q. 日本の数字はありますか? A. 海外ほど大規模な調査は少ないですが、事例は増えています。別の記事で紹介しています。
Q. これから何が起きますか? A. 予測は難しいですが、「確認できる人」の重要性は上がると考えています。作れる人が増えるほど、確認の需要が増えるためです。
まとめ
- AIで開発する人の63%は、すでに開発者ではない
- 一方で、作られたアプリの65%に弱点、58%に重大な問題が見つかっている
- 確認する側も追いついておらず、必ず確認している開発者は48%
- 「自分だけで使うつもり」が業務利用に移るときが、いちばん危ない
- 課題は道具ではなく判断。何を確認すべきかを知っている人が必要