外注していたサービスは、AIならどこまで自分で作れる?
外注費には何が含まれているのか。そのうちAIで代われる部分と、代われない部分を分解して考えます。判断の目安もあわせて紹介します。
「これを作ってもらうと、いくらですか」。以前なら、数十万円から数百万円という答えが返ってきました。では、AIを使えばタダになるのか。答えは「一部は」です。外注費の中身を分解すると、どこが自分でできて、どこができないかが見えてきます。
まず結論
結論として、試作品と小規模なサービスは、かなりの部分を自分で作れるようになりました。一方で、本格的に運用するサービスは、今も専門家の力が必要です。
大事なのは、外注費の中身を分解して考えることです。「開発費」という一言でまとめると判断できませんが、分解すると、どこが自分でできてどこができないかが見えてきます。
外注費には何が含まれているか
依頼したときに払っているお金は、コードを書く作業だけの対価ではありません。中身はこうなっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 要件を決める | 何を作るかを整理し、合意する |
| 設計する | 全体の組み立てを決める |
| 作る | 実際にコードを書く |
| 確認する | 正しく動くか、危なくないかを確かめる |
| 公開する | インターネットで使える状態にする |
| 運用する | 動かし続ける。止まったら直す |
| 説明する | 進め方や判断を、依頼者に伝える |
「作る」は、この中の一部でしかありません。 ここが重要な点です。
AIで代われる部分
先ほどの表を、代われるかどうかで塗り分けます。
| 項目 | AIで代われるか |
|---|---|
| 要件を決める | △ 整理は手伝えるが、決めるのは自分 |
| 設計する | △ 小規模なら可能。大きくなると厳しい |
| 作る | ◎ かなりの部分を代われる |
| 確認する | ✕ 自分で確認する必要がある |
| 公開する | ○ 小規模なら自分でできる |
| 運用する | △ 平常時は問題ないが、止まったときが難しい |
| 説明する | — 自分で作るので不要になる |
いちばん代われるのが「作る」の部分です。そして外注費のうち、この部分が占める割合は決して小さくありません。
だから「AIを使えば安く済む」というのは、部分的には本当です。
これまで
- 1アイデアを考える
- 2エンジニアを探す
- 3作りたいものを説明する
- 4数十万〜数百万円を払う
- 5数週間〜数か月待つ
いま
- 1アイデアを考える
- 2AIに「こんなものを作りたい」と相談する
- 3その日のうちに動くものができる
代われない部分
一方で、代われない部分もはっきりしています。
確認すること
これがいちばん大きいです。 AIは頼まれていないことを考えないので、確認は自分でやるしかありません。
65%
AIに任せて作られたアプリのうち、調査で弱点が見つかったものの割合です。外注していれば、この確認は費用に含まれていました。
外注費には、この確認の費用が含まれていました。 自分で作る場合、その分は自分の責任になります。ここを理解せずに「安くなった」と考えるのは危険です。
止まったときの復旧
サービスが動かなくなったとき、原因を突き止めて戻す作業です。平常時は自分で運用できても、止まったときが難しいというのが実際のところです。
大きくなったときの設計
使う人が増えたとき、どこが苦しくなるかを見越して組み立てる判断です。
判断の目安
では、どういう場合に自分で作り、どういう場合に依頼すべきか。目安を挙げます。
自分とAIでできることが多い
- 自分や友達だけで使うツール
- 学校や会社の中だけで使うツール
- アイデアを試すための試作品
- 利用者が少ない小さなサービス
専門家の知識が重要になる
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりをする
- 利用者が一気に増えたとき
- 動かなくなったときの復旧
自分で作るのが向いている場合
- アイデアを試したいだけ — 本当に必要とされているかを確かめる段階
- 自分や社内だけで使う — 外部に公開しない
- 使う人が少ない — 数人から数十人程度
- 止まっても大きく困らない
依頼したほうがいい場合
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりが発生する
- 止まると業務や商売が止まる
- 使う人が大きく増える見込みがある
見積もりを読むときに使える質問
自分で試作品を作ってみると、見積もりの中身が読めるようになります。そのとき使える質問を挙げます。
見積もりが高いと感じたとき
丸ごと値引きを求めるのではなく、内訳を分解してもらいます。
お見積もりについて、内訳を教えていただけますか。
・要件の整理
・設計
・実装
・テスト・安全性の確認
・公開作業
・公開後の運用
このうち、こちらで試作品を用意することで減らせる部分はありますか。
「試作品を用意すれば減らせる部分は」と聞くのがポイントです。 要件の整理と設計の一部は、動くものがあれば短縮できることが多くあります。
何が高いのかを判断する
自分で作った経験があると、次の判断ができるようになります。
| 項目 | 自分でやると | 見積もりで高いとき疑うべきこと |
|---|---|---|
| 画面を作る | 数時間 | 画面数に対して高すぎないか |
| データの保存 | 数時間 | 特別な要件があるのか確認する |
| ログイン機構 | 半日 | 独自実装しようとしていないか |
| 決済 | 1日 | Stripe など既存の仕組みを使うか |
| 安全性の確認 | — | ここは安くしてはいけない |
| 運用・保守 | — | ここも削ってはいけない |
下の2行が重要です。 安全性の確認と運用は、自分で代われない部分です。ここを削った見積もりは、安いのではなく危ないだけです。
試作品を渡すときに添える情報
試作品を作ってあります。これと同じ動きのものを、本番向けに作ってほしいです。
・動くもの: (URL)
・使った構成: Supabase(データ保存)、Vercel(公開)
・検証結果: ◯人に使ってもらい、△△という反応でした
・こちらで気づいている未対応の部分:
(安全確認をしていない、など正直に書く)
中身は作り直していただいて構いません。動きの参考にしてください。
最後の一文を入れてください。 「これを活かして」と言うと、かえって工数が増えることがあります。
現実的な進め方
「全部自分」か「全部依頼」の二択ではありません。 組み合わせるのが現実的です。
- 1
自分で試作品を作る
本当に必要とされているかを、自分で確かめます。ここに費用をかける必要はありません。
- 2
使ってもらって確かめる
少人数に使ってもらい、需要があるかを見ます。
- 3
需要があったら、専門家に相談する
動くものがある状態で相談できるので、説明が圧倒的に楽になります。
- 4
本番向けに作り直す、または補強する
ここで初めて費用をかけます。
この進め方の利点は、「作ってみたけど誰も使わなかった」という最悪の結果を、安く早く発見できることです。
以前は、この確認に数十万円かかっていました。今は自分でできます。節約になるのは「作る費用」ではなく、「外れたときの損失」です。
依頼するときにも効いてくる
自分で一度作った経験があると、依頼するときにも効きます。
- 何が難しくて何が簡単かの感覚がつかめる
- 見積もりの内容を理解できる
- 「これは要らない」と判断できる
丸ごとお任せするより、はるかに良い関係で進められます。
よくある質問
Q. 具体的にいくら安くなりますか? A. 案件によって差が大きいので、金額は書きません。ただ**「試す段階の費用をほぼゼロにできる」**というのが、いちばん大きな変化です。
Q. 自分で作ったものを、後から依頼できますか? A. できます。動くものがあると、意図が伝わりやすくなります。ただしそのまま本番で使うのではなく、作り直しになることは想定しておいてください。
Q. 依頼先が「AIで作ったものは見ません」と言ったら? A. そういう場合もあります。ただ、動くものは仕様書の代わりになります。 「これと同じ動きのものを作ってほしい」という伝え方ができます。
Q. まず何から作ればいいですか? A. 起業するなら、エンジニアを探す前に自分でMVPを作ってみように、試作品の作り方をまとめています。
Q. 自分で作ったほうが安いなら、依頼する意味は? A. 確認と運用の責任を引き受けてもらえることです。ここに価値があります。安さだけで比べるものではありません。
まとめ
- 外注費は「作る」だけでなく、要件・設計・確認・公開・運用を含む
- AIで代われるのは主に**「作る」部分**
- 確認・復旧・大きくなったときの設計は、今も専門家の領域
- 節約できるのは作る費用より、外れたときの損失
- 現実的なのは、自分で試作 → 需要を確認 → 専門家に相談という順番