「アイデアはあるけど作れない」がなくなると、何が変わる?
アイデアを思いついても形にできない、という状態が長く続いてきました。それが変わりつつある今、何が起きているのかを説明します。
「こういうサービスがあったらいいのに」。そう思ったことのある人は多いはずです。でも、ほとんどの人はそこで止まってきました。止めていたのは能力ではなく、お金と時間と、説明の難しさでした。その壁が今どう変わったのかを書きます。
まず結論
結論として、「アイデアはあるけど作れない」という状態は、もう当たり前ではなくなりました。
これまで、アイデアと実物の間には大きな壁がありました。その壁は、お金と時間と人です。
今は、思いついたその日に形にできます。この変化がもたらすのは、「作れる人が増える」ことではなく、「試せる回数が増える」ことだと考えています。
これまで何が起きていたか
アイデアを思いついた人が、実際にたどっていた道はこうです。
これまで
- 1アイデアを考える
- 2エンジニアを探す
- 3作りたいものを説明する
- 4数十万〜数百万円を払う
- 5数週間〜数か月待つ
いま
- 1アイデアを考える
- 2AIに「こんなものを作りたい」と相談する
- 3その日のうちに動くものができる
この流れには、3つの関門がありました。
関門1:エンジニアを探す
知り合いにいなければ、そこで終わりです。SNSで探しても、実績のない人のアイデアに乗ってくれる人は多くありません。
関門2:お金を用意する
会社に依頼すれば、数十万円から数百万円かかります。「試しに作ってみる」ができない金額です。
学生や、副業で始めたい人にとっては、事実上の不可能を意味していました。
関門3:正確に説明する
自分の頭の中にあるものを、言葉と資料だけで正確に伝えるのは、想像以上に難しい作業です。
伝えたつもりでも違うものができあがり、修正のたびに追加費用と時間がかかりました。
この3つのどれかで止まった結果、大半のアイデアは形にならないまま消えていきました。
何が変わったか
いちばん大きいのは、失敗の値段が下がったことです。
以前は、1つのアイデアを試すのに数十万円と数か月かかりました。だから**「絶対に当たる」と確信できるものしか作れませんでした。**
今は、思いついたものを数日で試せます。外れてもいい、という前提で動けるようになりました。
これは、成功率が上がったという話ではありません。試行回数が増えたという話です。そして、新しいものが生まれるかどうかは、たいてい試行回数で決まります。
説明のズレがなくなった
自分で作れば、頭の中のものをそのまま形にできます。「ちょっと違う」と思ったら、その場で直せます。
相談の順番が変わった
以前は「アイデアを説明して、仲間になってもらう」でした。
今は「動くものを見せて、一緒にやらないかと誘う」ができます。動くものがあるほうが、圧倒的に話が早いです。
それでも残る壁
正直に書きます。すべての壁がなくなったわけではありません。
壁1:何を作るかは、自分で決める必要がある
作るのが簡単になったぶん、「何を作るか」の重要度が上がりました。
AIに「便利なものを作って」と頼んでも、何も出てきません。自分が何を欲しいのかを言葉にする力が要ります。
壁2:使ってもらえるかは、また別の話
作れることと、使われることは違います。
多くの場合、作ったものは最初は誰にも使われません。 これは今も変わっていません。作れるようになったからといって、当たるわけではないのです。
壁3:公開の判断
動くものができても、他人に使ってもらうには確認が必要です。
自分とAIでできることが多い
- 自分や友達だけで使うツール
- 学校や会社の中だけで使うツール
- アイデアを試すための試作品
- 利用者が少ない小さなサービス
専門家の知識が重要になる
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりをする
- 利用者が一気に増えたとき
- 動かなくなったときの復旧
とくに、他人の情報やお金が絡む場合は慎重に進める必要があります。詳しくはAIでアプリができた!でも、そのまま公開して大丈夫?にまとめました。
最初の一歩
「アイデアはあるけど何から始めればいいかわからない」という人に向けて、具体的な順番を書きます。
- 1
本命のアイデアは、いったん置く
思い入れが強いものは、失敗したときの落ち込みも大きくなります。
- 2
自分の面倒ごとを1つ選ぶ
毎週やっている手作業などがおすすめです。
- 3
それを楽にする小さな道具を作る
ここで「作れる」という感覚をつかみます。
- 4
本命のアイデアに戻る
一度作った経験があると、進め方の見当がつきます。
なぜ本命を後回しにするのか。 初めての挑戦は、必ずどこかで詰まります。そのときに題材が本命だと、「このアイデアはダメなんだ」と誤解してしまいます。
詰まったのはアイデアのせいではなく、慣れていないだけです。それを切り分けるために、練習用の題材を先に1つ通しておくことをおすすめします。
最初の1つを、今日始めるなら
「何から始めればいいか」を、具体的な指示まで落とします。
ステップ1:練習用の題材で1つ作る
本命ではなく、自分の面倒ごとを題材にしてください。
自分用の小さな道具を作りたいです。プログラミングは初めてです。
作りたいもの:
・(毎週やっている面倒な作業を1つ書く)
・それを楽にする最小限の機能だけでいい
まずは自分のパソコンの中で動く状態にしてください。
ステップ2:本命のアイデアを1文にする
作れる感覚をつかんだら、本命に戻ります。まず1文で書いてください。
【誰が】(対象者)
【いつ】(問題が起きる場面)
【何に困っている】(具体的に)
【今どうしている】(代替手段)
【その代償】(時間やお金)
埋まらない項目があるなら、まだ人に聞けていません。 ここが埋まらないまま作り始めると、途中で迷子になります。
書き方は要求と要件は違う|PRDの書き方で詳しく説明しています。
ステップ3:試作品を作る
新規事業の検証用に、試作品を作りたいです。
本番で使うものではなく、10人に触ってもらって需要を確かめるためのものです。
(上で書いた1文を貼る)
中心となる流れを1本だけ実装してください。
それ以外の機能は作らないでください。
「1本だけ」と指定するのがコツです。 指定しないと、周辺機能まで作られて時間がかかります。
よくある質問
Q. アイデアが漠然としているのですが A. 1文で書いてみてください。 「◯◯な人が、◯◯という状況で困っている」という形です。書けないなら、まだ具体化が足りません。
Q. 似たサービスがすでにあります A. よくあることです。ただ、既存のものが自分に合わなかったから作るというのは、十分な理由になります。自分専用に作れるのが、今の時代の利点です。
Q. 作っても使ってもらえるか不安です A. その不安は正しいです。だからこそ小さく作って早く試すべきです。詳しくは起業するなら、エンジニアを探す前に自分でMVPを作ってみようを読んでみてください。
まとめ
- 「アイデアはあるけど作れない」を生んでいたのは、お金・時間・説明の壁
- 変わったのは成功率ではなく、試せる回数
- 残る壁は、何を作るか決めること・使ってもらえるか・公開の判断
- 最初は本命ではなく、自分の面倒ごとから始める
- 詰まったのはアイデアのせいではなく、慣れていないだけ